アメリカの牛乳離れが止まらない/乳業最大手ディーン・フーズが破産

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アメリカの老舗・最大手乳業メーカー ディーン・フーズが破産。

今月12日、このニュースに驚かれた方も多かったのではないでしょうか。アメリカといえば乳製品の消費量が日本より遥かに多い国だったはず…!実際2014年度のデータでは世界で5番目の消費量を誇っていました。

 

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かつて妄信的に完全食品と信じられていた牛乳・乳製品ですが、近年アメリカでは選ばない人が増え、ついにメーカー最大手の存続を揺るがす事態にまで発展しました。

 

健康上の理由、環境や動物に配慮する倫理的な理由など牛乳離れの動機は様々ですが、2020年の東京オリンピックを背景に食の多様性対応に迫られている日本にも、今後影響があるのではないかと感じました。一体アメリカで何が起こっていたのか、私なりに掘り下げて見ていきたいと思います!

 

 POINT! 

創業94年のアメリカ乳製品最大手メーカー、ディーン・フーズ(Dean Foods)が破産申請。今年上半期の売上は7%減少、利益は14%減少、株価は80%下落。

 

原因は消費者の牛乳離れ。近年、低糖質または植物性の代替製品が注目を集め、徐々に乳製品が消費者の嗜好に合わなくなってきている。

 

●一方、植物性ミルクの市場は成長。国際的市場調査会社ユーロモニターによれば、今年はグローバル市場で180億ドルの売上に届く見込み(前年比3.5%成長)。

  

New York (CNN Business)

日経記事

 

加速するアメリカの牛乳離れ

植物性ミルクの台頭

過去4年、あらゆる種類の牛乳(脂肪分2%、脂肪分1%、無脂肪乳)において売上は減少、フォーブスジャパンの記事によれば、アメリカ人の牛乳消費量は2008年から2018年にかけて18.4%減少しているとのこと(合衆国農務省のデータ)。一方、麦から作られるオートミルク市場の成長は顕著で、この一年間で売上は636%伸長、5,300万ドルにのぼっています。

 

合衆国農務省のデータで、米国人の牛乳消費量は2008年から2018年にかけて18.4%の減少となっていた。

乳製品市場全体から見るとわずかな規模ではあるが、豆乳やオーツミルクなどの植物由来ミルクの消費量は近年、劇的に増加している。Plant Based Food Association(植物由来食物連合)の直近のデータでは、植物由来ミルクの売上は2018年に9%伸びた一方、牛乳の売上は6%の縮小だった。

出典:Forbes Japan / https://forbesjapan.com/articles/detail/30718

 

酪農業を退く人々も

カリフォルニア州で最も古くから酪農業を営むジャコマッツィ乳業(Giacomazzi Dairy)が、乳業をやめてアーモンドミルク事業に切り替えたニュースが、先月アメリカで注目を集めました。人々の牛乳離れはメーカーだけでなく、酪農の現場にまで影響していました。アメリカの乳業は、衰退の一途を辿り始めたといっても過言ではないかもしれません。

 

参照記事(下に要約)

 

 記事の概要 

●ジャコマッツィ乳業は酪農業で125年の歴史を持ち、農場の老朽化により効率的に生産ができなくなったことをきっかけに、乳業を廃業しアーモンド事業に転向すること決断。既に400エーカー(東京ドーム一個が約11.5エーカー)のアーモンド畑を持ち、将来的には更に500エーカー拡大する予定とのこと。

 

●アーモンド事業に切り替えた理由は、老朽化による生産効率の低下だけではなく、乳業の先行きが暗いことも影響。ここ5年、規制や労働コストの上昇、牛乳価格の低迷といった理由から乳業で利益を上げることが難しくなっていた。

 

●酪農業を後にしたのは彼一人ではなく、多くの酪農家が事業転向に向かっている。転向した元酪農家は、アーモンドやピスタチオ、ぶどうなど、牛乳より利益を産む代替商材は沢山あり、それらに投資するのが良いと語る。

 

●カリフォルニア州アーモンド委員会のCEOであるリチャード・ウェイコット氏は、アーモンドの生産量は2021年までに30億ポンドに達すると予測されると語る。

 

●実はイギリスでも酪農家の撤退が進んでおり、新しい調査によれば毎週一軒の酪農家が乳業を離れている。また、独立したシンクタンクRethinkXによるレポートでは、2030年までに牛肉および酪農産業が「完全に崩壊」する可能性があると予測されている。

   

スペインの牛乳の消費量傾向は?

自分が暮らしているスペインの牛乳の消費動向も気になって調べてみたところ、スペインの新聞20minutos(ベインテミヌートス)の記事を発見。タイトルは「ここ数年牛乳の消費量は減少、しかし減少傾向は止まり始めた」とありました。内容を見てみましょう!

 

ちなみに、スペインは冒頭で紹介した2014年のデータによれば、世界4位の牛乳消費国です。人口わずか4000万人の国なのに、5位のアメリカよりも消費量が多いとは…改めて見ると驚きです。

 

参照記事(下に要約)

 

 記事の概要 

牛乳の消費量は2010から9.7%減少しているが、2018年には減少傾向が止んだと見られている。

 

●スペインの農林水産省のデータによれば、2010年の消費量が352万トンだったのに対し、2017年の消費量は318万トンと大きく減少。2010年度比で見る減少率は9.7%だが、2000年度比で見た場合は20%と減少率はさらに大きく、乳製品業界の懸念は深刻化している。

 

●スペインの酪農連盟長によれば、今でも100%全ての家庭が何かしらの乳製品を購入し続けているが、乳製品の消費量を40%前後減らしている家庭が600万世帯存在している。調べによると、この600万世帯のうち70%は以前と変わらず同じ量を買ってるつもりで意識的に消費を減らした世帯ではなかった。残り30%は乳製品の消費を減らすことを決断した世帯であることが判明した。


●Inlac(インラック:スペインの乳製品専門組織)の会長Charo Arredondoは、大豆やアーモンドなどの植物性ミルクは従来の牛乳の地位を脅かしていると語る。植物性ミルクには、牛乳に含まれるカルシウム、ビタミン、たんぱく質のいずれも含まれていないと植物性ミルクを脅威視している。

また、植物性ミルクの植物の原産地の強制記載するよう規制強化されることを望んでいる。多くの消費者が外国産の植物が原材料の植物性ミルクより、ここスペインで生産された牛乳を飲むことで、スペインの酪農家を助けたいと思っているからだと言う。

 

2018年には、これまでの減少傾向を打ち破るささやかな改善傾向(0.5%の成長)が見られた。これにより「2019年は回復の年になる」と確信されている。

 

●専門家によると、牛乳を消化できない体質により乳製品を避ける消費者がいるため、2018年はより消化を助ける乳製品の販売量がが21%増加したとのこと。従来の牛乳は4%減少していた。一方植物性ミルクは、大豆飲料の販売量は6%減少したが、オートミール、アーモンド、ヘーゼルナッツ、米、キヌアの飲料は11%増加し、成長を見せている。

  

動物性食品をこよなく愛するスペインでも牛乳離れが進み、2000年と比較すると20%も消費量が減少しているというのは驚きました。なぜなら、普通のカフェやレストランで豆乳ラテを出してくれるところは全然なく、スペインは牛乳一人勝ちの国なんだな〜と肌で感じていたからです。

 

一方で、酪農連盟は子供を対象に牛乳をたくさん飲むことの重要性を謳うキャンペーンなどを続けていたり、乳製品専門組織の会長は植物性ミルクの栄養価を軽視すると同時に植物性ミルクの原産地表示の規制強化を求めるなど、従来の乳製品の売上を保護する動きも強いことが分かりました。

 

それでもオーツ麦、アーモンドをはじめとする植物性ミルクの売上げは、アメリカのように成長の一途を辿っていくのでしょうか。今後も見守っていきたいと思います。 

日本の牛乳の消費量傾向は?

さらに日本の状況も調べてみました。農林水産省が乳製品の消費量をグラフにまとめてくれていました。

 

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出典:農林水産省 生産局畜産部牛乳乳製品課「最近の牛乳乳製品をめぐる情勢について」2019年11月

 

まずは上の図を見てください。牛乳の消費量は1995年頃にピークを迎え、その後少しずつ減少しています。しかし近年はピーク時ほど多くはないものの、なんと2014年から4年連続の増加傾向にあることが分かります。2018年は前年比で2.1%で伸びています。

また下の図を見ると、チーズ・生クリームの消費量も増加傾向で推移していることも分かります。

 

牛乳消費量の多いアメリカやスペインで牛乳離れが進んでいるのに対し、日本では逆行して消費量が増加傾向にあるとは興味深い結果でした。

 

私の個人的な意見を言うと、今後日本の牛乳の消費量の増減に拘らず、ますます植物性ミルクの品数が充実してくれると嬉しいです。欧米ではすでに植物性ミルクがスーパーの棚一面を埋め尽くすように並んでいることは珍しくなく、牛乳消費量の多いスペインでも同様です。食の多様性への対応はやはり進んでいると感じます。

 

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ビーガンやベジタリアン人口も世界的に増加していることから日本にも遅かれ早かれその影響は上陸すると思いますし、技術の向上で豆乳をはじめ植物性ミルクの質は向上しているので、純粋に味を好んで買う人も沢山増えていくと思います。

 

「マーケットがあるから作る」というシンプルな発想で、日本の信頼ある乳業が植物性代替ミルクの開発にもっと精を出してくれたらいいな〜と思います。

 

長くなりましたが、アメリカの大手乳業メーカーの破産のニュースのおかげで、少し世界の乳製品動向に詳しくなれました。また、興味深いニュースを見つけたらご紹介したいと思います!

お読みいただきありがとうございました〜♪