パリ、サーカスの動物使用を禁止/調教の悲劇そして引退後は…?

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仏パリ市議会が今月15日、サーカスでの野生動物使用を禁止する条例案を採択しました。国家として動物使用を全国的に禁止すべきかは未だ検討中だったため、今回のパリの決断は国に先駆けたものとなりました。以下に詳しく見て行きます。

  

パリ「ミーシャの死を無駄にしない」

来年2020年以降、サーカスで外来種の動物利用が認められなくなります。パリ市議会は、動物の使用許可を持つ既存のサーカス団に経済支援を実施し、ショーに出演してきた動物の安全な引退を援助する予定です。

Mischa the bear dies after rescue from 'cruel' animal show in France

A brown bear in a zoo. Photo: AFP 出典:The Local

今回の決定は、ショーの調教のために長年虐待された後、ラ・タニエール動物保護施設に引き取られたクマのミーシャが亡くなった数日後のことでした。ミーシャの死をきっかけにパリ市民の禁止を求める声が高まったこともきっかけとなりました。

 

ミーシャが置かれた生活環境は、一部の動物愛護団体が中世の刑務所に例えるほど過酷なものでした。

 

ラ・タニエール動物保護施設の創設者であるパトリック・ヴィオラ氏はミーシャの死を発表する際、「これを教訓とする必要がある。彼(ミーシャ)の死を無意味なものにしてはならない。」と語りました。

 

ヨーロッパは動物使用禁止の風潮

野生動物にサーカス芸を仕込むために行われる常習的な虐待行為、また移動に伴う継続的な監禁状態によって動物が苦しめられている実態を受け、イギリスやイタリアなどのヨーロッパの多くの国が、野生動物のサーカス使用をすでに禁止しています。

 

パリの副市長ペネロペ・コミテス氏は声明で、「今回の決定は時代の変化を反映した合理的判断である。」と述べ、さらに、3年間の移行期間中はサーカスで働く人達を援助することを発表しています。

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現パリ副市長ペネロペ・コミテス氏 出典:Ville de Paris 

  

またスペインの首都マドリッドでも、今年始めに野生動物を使用したサーカスを禁止する法案が可決されました。

市議会議員のイグナシオ・デ・ベニート氏は、

「この法律がサーカス自体を攻撃するものと解釈されることは望ましくありません。サーカスの歴史は文化的遺産を構成する一部です。しかし21世紀においては、人間や動物などあらゆる生き物の苦しみを、笑いの裏側に隠すべきではありません。」と述べています。

サーカスの実態

誰しも一度はサーカスを見に行ったことがあるのではないでしょうか。私も小さい頃に一度だけ両親と兄と見に行った記憶があります。

動物達に行われている調教は想像を絶するほど恐ろしいものだとご存知でしたか?

 

動物はなぜ芸をするのか? 

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まず前提として、クマが自転車に乗ったりゾウが逆立ちをしたりするのは非常に不自然なことです。本来の彼らの自然な生活の中ではどう転んでもやるはずのない行動です。そんなことをなぜ動物達はするのか。それは、やらなければどれだけ酷い目に遭わされるかを知っているからです。 

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調教師は、調教用に様々な種類のムチ、先端に鋭い鉤のついた棒(ブルフック)、ドリル、スタンガンなどを携えて動物に芸を仕込みます。これらの道具で動物達は全身を殴打され、ロープで四肢を縛られ、木の板で殴られ、鉤で皮膚をえぐられ、刺され、痛みのあまり叫び声を上げます。また、言うことを聞かない動物には殴る蹴るの暴行を加え、怒声を上げて罵るのも日常茶飯事、動物の血で服や靴が汚れることもあるほどです。

 

このように調教という名の「虐待」によって動物の体と共に心を打ち砕き、全身と脳裏に植え付けた痛みと恐怖で服従させて出来上がったのが動物の芸です。

 

また、巡業に伴う移動も大きな苦痛です。身動きの取れない狭いコンテナに詰め込まれ、何時間もトラックの中で揺られ続けます。移動の多い生活を維持するため、移動とショー以外檻の中に閉じ込められるか、鎖を繋がれて監禁されます。衛生状態も良くない管理状況の中、常に与えられる恐怖と監禁のストレスで異常行動を起こします。

 

そんな実態とは裏腹に、サーカスの舞台では動物達が愛らしいポーズを取ったり、調教師とハグをしたり、互いの絆を見せるような演出がなされますが、これはとんでもない欺瞞です。指示されたポーズを取らなければ、後で地獄のような仕打ちが待っているのです。

 

サーカス引退後も地獄

老齢でサーカスを引退した後、人間のショー出演に尽くした動物達にはさらに残酷な現実が待っていました。写真は先ほどのパリの記事にも登場したクマのミーシャ(雄)です。

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何をしているのか、分かりますか?

 

ミーシャは引退後クマの狩猟犬の訓練センターに入れられました。そして短い鎖につながれ、牙を抜かれ、爪を剥がされて、猟犬の攻撃の的にされていたのです。長年の人間からの虐待に耐えてビジネスに利用された後、それでもまだ人間はミーシャに苦しみを与え続けたというのです。あまりに残酷な事実です。

 

このミーシャの死後すぐにパリは野生動物のサーカス使用を禁止しました。また、世論調査によると、フランス人の圧倒的多数が外来種の動物を娯楽のために利用することに反対していることも分かっています。日本では動物使用に関する議論さえ耳にしたことがないのが実情です。

ボリビアを皮切りに世界は禁止の流れ

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現在、世界の流れはサーカスの動物利用禁止に向かっています。

世界で初めて全国的にすべての動物の使用を禁止したのは南米ボリビア(2009年)。

また同じように、2012年にヨーロッパで初めて全国的にすべての動物の使用を禁止したのはギリシャです。娯楽施設でのショーや街頭での見世物に動物を使うことも禁止した画期的な法改正でした。

 

PEACEの記事によれば、ヨーロッパ30か国、北米アメリカ・カナダ、中南米12か国、アジアでは台湾・インド・シンガポールなど6か国、オーストラリアでサーカスでの動物使用が禁止されています。

 

アメリカの老舗サーカスが解散

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このような世界中で広がる禁止の流れを受けてアメリカでは、2017年にアメリカの老舗サーカス団「リングリング」がその146年の歴史に幕を閉じました。

 

リングリングは、2011年には動物福祉法違反による罰金刑を受け、その後動物愛護団体からの批判を受けて一番人気のゾウのショーを中止。その後チケットの売り上げが減少して経営難に陥り、廃業の決断に至ったようです。

 

アメリカ・フロリダ州にあるゾウの保護センターでは、「保護」を謳いながら、ゾウの子供をリングリングの調教のために虐待していた事実も発覚しています。調べれば写真などたくさん出てきますが、とてもかわいそうなものでした。

取り残される日本

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では日本はどうでしょうか…?

残念ながら、日本ではサーカスの動物利用は禁止されていません。それどころか動物利用に関する議論さえ起こっておらず、完全に世界の流れに取り残されているといっても過言ではありません。

 

海外サーカス団の受け皿に

日本では未だに動物を使ったサーカス団が存在し、調教などに関する法規制が甘く罰則もないのが現状です。

 

また、海外の動物を使用するサーカスも来日して日本各地を巡業しています。もはやヨーロッパ等の他の国では動物が出演するショーが受け入れられないため、公演先として規制のない日本などのアジア各国に向けられているのです。

有名なところだと、ロシアのボリショイサーカスなどが日本で公演しています。もし見に行こうとする人がいるならば、動物がどのように扱われているのかをぜひ知ってほしいです。
 

規則はどうなっている?

サーカスや動物園など動物の展示を生にする業者にも、守るべき法令が存在しています。展示動物の飼養及び保管に関する基準には、たとえば以下のような規定があります。

 

動物に演芸をさせる場合には、演芸及びその訓練は、動物の生態、習性、生理等に配慮し、動物をみだりに殴打し、酷使する等の虐待となるおそれがある過酷なものとならないようにすること

 

要は、動物の本来の習性に配慮し、虐待と言いうる過酷な訓練は禁止だと定めています。上の章で見たように、サーカスの調教は日常的な暴力や監禁によって身体的・精神的苦痛を与え続ける恐ろしいものです。この法令に基づけば、日本の動物を使用するサーカスは、本来違法で運営できないものだと言えます。

日常に潜む、動物利用の精神

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サーカスだけではありません。よくよく目をこらせば、世の中に存在する“動物の利用”がたくさん浮かび上がってきます。一気に例を挙げてみましょう。

 

・動物園

・水族館

・いるかショー

・いるかと泳ぐアクティビティ

・トラとの写真撮影

・ゾウ乗り体験

・猿回し

・観光地で見かける馬車やロバ

・闘犬、闘鶏、闘牛

 

また、一見すると動物愛にも見える要注意な形態もあります。

・猫カフェ

・ふくろうカフェ

・ペット

 

などです。

 

動物を利用した娯楽は思いつくだけでもこんなにあります。

「え!動物園もダメ!?」と思う人がいると思います。そうです、動物園もです。これらすべてが、人間の「(芸などを)見たい・触りたい・乗りたい」という欲求を満たすために生まれた娯楽です。動物側の合意は(取りようが)ありません。サーカスのように身体的に精神的に痛めつけたかどうかが基準ではありません。人間の欲求を満たすために動物が一方的に利用されているか否が基準です。

 

「動物も飼われて嬉しそう」とか「代わりに動物のこと世話してあげてるじゃん!」と言う方がいるかも知れません。動物が喜んでいるかどうか、それは人間側の勝手な解釈ですし、人間に世話されることは動物が望んだことではありません。人間とではなく自然界で仲間の動物と暮らしていたらもっと幸せだったかもしれないし、たとえ食糧がなくても、人間の保護を受けず野たれ死んだ方がマシだと思っている高潔な動物だっているかもしれません。彼らの本心は誰にも分からないのです。

 

猫カフェの類いは引き取り手のない動物を保護する役割を担っているケースもあるかもしれませんが、動物を利用して人を喜ばせてお金をもらう構造はサーカスと大差ありません。毎日毎日知らない人が来て観察されたり、体を触られたり、餌を与えられたり、延々構われるのは猫達が望むことかは甚だ疑問です。また猫カフェの大半が雑居ビルの一室にあります。自然の風が入らない空間で、猫達は自然の土や草を踏むことはないのだなと思うと悲しくなります。

 

また、人間の都合良く品種改変されたペットを愛玩目的で飼うことも動物利用と言えます。飼いやすくて人間好みの可愛らしい犬を、犬の繁殖機能を利用して人工的に作って販売しているのです。

個人的には、保護目的などでなくお金を出してペットを買って飼う場合は動物利用的だと考えています。もし飼うとするならば、自然の多いところで去勢したり避妊手術をさせず子孫を残す行動まで尊重できる環境を整えることが最低限必要だと考えています。犬を例にとれば、都市型の生活に合うように極端に小型化され、煩わしい本来持っている生理機能を奪って可愛いところだけ残して愛するような飼い方はあまりに人間本意だと思います。ペットが家族だと言うなら、自分の本当の子供を去勢させる、または避妊手術をさせることが出来ますかと問いたいです。

今が私達が変わるとき

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相手が人間でも動物でも、正しさに迷った時は「もし自分がされたら?」と考えれば良いのです。簡単ですね!動物はいやだと思っても「いや」だと言えません。私たち人間が動物の「いや」を敏感に感じ取り、行動を変えるときが来ていると思います。

 

動物達が本来の場所で本来の姿で生きられるように、もっと沢山の人が当たり前に動物の権利を意識して暮らす世の中になっていくことを願います。

 

お読みいただきありがとうございました!!

参照記事

Paris moves to ban wild animals from circuses - The Local